もののけとけもののけ

迷い走る人生 ほどほどにナイス

信頼貯金とかいうクソ概念からの開放を目指す

生きていると、けっこうな頻度で

他人から助けの手を差し伸べてもらえる機会がある。

助けてもらえるときの状況の深刻さは様々だけれど、

その手を素直に取れるかどうかは、

「信頼貯金」という概念に囚われているか否かで

違ってくると思っている。

 

信頼貯金というのは、

ティーブン・コヴィー氏の著作『7つの習慣』の本に

出てくる言葉で、私自身、新卒入社した会社で

気が狂いそうになる程言い聞かされてきた概念だ。

 

 

大雑把に説明すると以下のような内容である。

 

「信頼とは貯金のようなもので、他人の手を煩わせると引き出される。

 信頼に値する行動をとると貯まる。

 信頼残高が高ければビジネスや生活上の

 人間関係におけるチャンス・メリットを手にしやすくなる。

 そして貯金と同じように、貯めるのは大変だが、使う時は一瞬である

 

「信頼貯金を貯めるには、

 相手を理解する・小さなことを気遣う・約束を守る

 ・期待を明確にする・誠実さを示す・

 (信頼残高を)引き出してしまったときには心から謝る

 ……といった方法がある」

 

まともなことを言っているように聞こえる。


しかし、この概念を大事に握りしめてしまうことによる

弊害があるのもまた、事実であるように思う。

現に私はそれで苦しんでいるのだし。


この考えを持ってしまうと何がまずいかというと、

極端に他人の顔色を窺いながら

生きるようになってしまいやすくなるのだ。


「信頼貯金が少なれば、チャンスを失う」

「信頼貯金は貯めづらく、失いやすい」

「信頼貯金を貯めるには、人の期待に応え続け、人が望むことをし続けなければならない」


これらの条件が悪魔合体し、

思考の中に根付いた上で社会生活を送ることを考えよう。

人はそれぞれ違う考えを持っているわけだから、

完全に「相手を理解する」ことなど不可能である。


「小さなことを気遣う」のも、

小さなことであるがゆえに気付きにくいので条件を難しくしている。


「約束を守る」については、

多くの人はそうしようと努力するだろうが、

とはいえ絶対というものはない。


「期待を明確にする」については、

そもそも期待する側が己の持つ期待の内容を

理解していないことも往々にしてあるため、

期待される側がブラックボックスの中身を

明らかにしようと躍起になるような事態が発生する。

 

「誠実さを示す」については抽象的だし、

結局のところ受け取る側の解釈次第なので

どうしようもない領域の話でもある。

 

「(信頼残高を)引き出してしまったときには心から謝る」

については、ここまで述べてきたようにそもそも

ノーミスでやっていくことがどだい無理な話なので、

逐一「心からの謝罪」なんざしていては

土下座をデフォルトの姿勢にして生きていく羽目になるだろう。


……早い話が、これらを律儀に実践しようとしたら、

遅かれ早かれ疲弊してしまうのだ。

結果として、

「これ以上失望されたくない(=貯金を減らしたくない)

から助けてもらいたくない、一人で生きていこう」

という考えにたどり着き、

見事に「他人の助けを受け取れない」人間が

爆誕するという寸法である。

 

……

 

もう止めにしねえか。


我々はもっとちゃらんぽらんに、

他人を頼りまくって生きていったっていいんじゃないか。

他人から差し伸べられた、助けの手を振り払って、

恐れの中で一人膝を抱えて沈んでいくより、

いろんな人の手を握りまくってひっぱりあげてもらって

光の中に戻ってくる方が多分、生きるのが楽になると思うんだ。

 

 

というわけで、私はここに「助けられ貯金」という概念を提唱したいと思う。


「逆信頼貯金」的な、アンチテーゼ的な概念だけれど、

たぶんこっちのほうが我々が呼吸するのを楽にしてくれるんじゃないかと思う。

 

① マジで困ってたら、時と場合により誰かがなんかしてくれることがある。ありがたく受け取ろう。

 

② お返しや埋め合わせをしようとか思ってはいけない。相手はなんかしたくてあなたに施しをしているのだから、むしろあなたが困っていることで相手の「助けたい」ニーズをその時点で満たしており、win-winである。

 

③ 助けたい、という相手のニーズを満たすことで、助けられ貯金の残高がたまる。助けられ貯金の残高がたまると、あなたの人生が楽になるので、どんどん助けられていこう。

 

④ 助けたい、という相手のニーズを満たせなくても(=あなたに助けを受けとる気力体力余力がなくても)、別に貯金が減ったり悪いことが起きたりはしない。そういう時は誰にでもあるので、特に罪悪感とか感じる必要はない。

 

⑤ 助けられ貯金がたまったからといって、必ずしも他人を助けなければいけないというわけではない。助けられる余力があるときに、助けたいと思うなら、助ければ良い。そうでなければ特に何もしなくて良い。

 

 

とりあえずこんなもんじゃなかろうか。


この話に限ったことでもないが、

「〜せねばならない」「〜しないと悪いことが起きる」系の

MUST文言は、極力自分の人生から削っていった方が

絶対に精神衛生上いいと思う。

 

ゆるく、縛りなく生きていこう。

少しでも呼吸を楽に、あるがままで生きていこうよ。


がんばりつづけないと生きてちゃいけないなんて

縛りはないんだからさ、本当は。

 

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と、うた御大も仰っています。