物心ついてから初めて存在を認識した「神社」に行ってきた
今から20年以上前のことである。
私は幼稚園に入る前、2歳ごろまで地元の児童館に毎週欠かさず通
初めて知った神様に、ふとまた会いたくなって、お盆休みの帰省を
鳥居は、あった。
紙垂はなく、しばらく人の手が加えられた様子はない。あたり一帯
鳥居の前で一礼し、山に向かって進んでいくと、長年の間に降り積
死にかけてもがく蝉や地を這う虫たちを踏まないように注意しつつ
やけにつぶらな目をした狛犬が、大人になった私を見つめていた。
拝殿に向かって立ち、財布の中を確認すると硬貨は50円玉一枚だ
それをそのまま静かに入れて、二礼、二拍手、それから、いつもの
祓えたまえ、清め給え。
祓えたまえ、守り給え。
祓えたまえ、幸え給え……
別に何をお願いしたわけではない。ただ、久しぶりに会いたくなっ
最後に一礼して顔を上げると、大きな羽根の黒揚羽が目の前をひら
山を降り、鳥居を抜けてお辞儀をし、帰る直前に振り返って気がつ
児童館は、聖域の中にあった。
鳥居の「向こう」に存在していたのだ。
私は、自我が芽生えるよりも前から、ここの神様の見守る中で、神
途方も無い愛だと思った。
風を包むようにして飛んでいた黒揚羽の正体も、何となくわかった
いつのまにか辺りに満ちていた風は、果てがないほど透明だった。