もののけとけもののけ

迷い走る人生 ほどほどにナイス

物心ついてから初めて存在を認識した「神社」に行ってきた

今から20年以上前のことである。
私は幼稚園に入る前、2歳ごろまで地元の児童館に毎週欠かさず通っていた。その児童館のそばには小さなお山と、石造りの大きな鳥居があって、たくさんのどんぐりを拾うことができた。私が物心ついてから初めて存在を認識した「神社」は、恐らくそこだ。

初めて知った神様に、ふとまた会いたくなって、お盆休みの帰省を利用して訪れてみることにした。


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20年前と変わらぬたたずまいの鳥居が、そこにあった。


鳥居は、あった。
紙垂はなく、しばらく人の手が加えられた様子はない。あたり一帯は雑草が伸び放題で、真夏の生命を謳歌しているように見えた。左側に写る児童館は近年使われていないようで、錆びついた遊具が静かに眠りについていた。

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小山の上の神社


鳥居の前で一礼し、山に向かって進んでいくと、長年の間に降り積もった草葉の影に埋もれるようにして拝殿に至る石の道が存在している。
死にかけてもがく蝉や地を這う虫たちを踏まないように注意しつつ、一歩一歩大切に歩を刻んでいく。


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黒目がちでチャーミングな目をしている。

やけにつぶらな目をした狛犬が、大人になった私を見つめていた。

拝殿に向かって立ち、財布の中を確認すると硬貨は50円玉一枚だけしかなかった。
それをそのまま静かに入れて、二礼、二拍手、それから、いつものお祈りの言葉を胸の中でしっかりと唱える。
祓えたまえ、清め給え。
祓えたまえ、守り給え。
祓えたまえ、幸え給え……
別に何をお願いしたわけではない。ただ、久しぶりに会いたくなって、挨拶に来ただけなので、本当にただ祈りの言葉を唱える「いま、ここ」にだけ全力で意識を向けて祈った。

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拝殿から参道を見る


最後に一礼して顔を上げると、大きな羽根の黒揚羽が目の前をひらひら飛んでいるのが見えた。そのまま私の体の周りを、輪を描くようにゆっくりと舞い、鳥居のある方に向かうと夏の空に溶けるようにして去っていった。


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私たちは、守られていた。


山を降り、鳥居を抜けてお辞儀をし、帰る直前に振り返って気がついた。

児童館は、聖域の中にあった。
鳥居の「向こう」に存在していたのだ。
私は、自我が芽生えるよりも前から、ここの神様の見守る中で、神様のお庭の中で遊ばせていただいていたということになる。

途方も無い愛だと思った。
風を包むようにして飛んでいた黒揚羽の正体も、何となくわかったような気がした。

いつのまにか辺りに満ちていた風は、果てがないほど透明だった。

 

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