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柳田國男と井上円了、2人の妖怪学研究への着目と、日本人が信じるものについての分析~「日本人はなぜ妖怪を畏れるのか」書評

「日本人はなぜ妖怪を畏れるのか」

という本を読了した。

以下、読んだ感想やあらすじ、要約なども交えつつ、書評を書いてみる。

 

要約

前半で井上円了、後半で柳田國男という、それぞれ異なる「妖怪学」への向き合い方をした人物について取り上げ、最終章では「日本人が信じるもの」についての分析を行っている。

 

井上円了について


井上円了は仏教哲学者である。民衆が妖怪を信じ文明の民になっていないのは教育と研究が不足している為と考え、妖怪研究を科学的見地から行った。教育と研究による「護国愛理(真理を愛し、国を護る)」が日本社会を発展させると信じていた。

円了は

  • 科学では解明できない妖怪を「真怪」
  • 自然現象による妖怪を「仮怪」
  • 誤認や恐怖など心理的要因による妖怪を「誤怪」
  • 人為的に引き起こされた妖怪を「偽怪」

と分類し、そのうち仮怪、誤怪、偽怪を科学的に研究することにより自然科学が解明できると考え、妖怪研究は科学の発展に寄与すると考えた。

 

柳田國男について


柳田國男東北を中心に地方の実情に触れ、民族的な文化への関心を高めた人物であり、妖怪学を民俗学の一環として捉えた。柳田は、妖怪の存在を普通の人々の真意伝承に迫る民俗資料としており、日本各地の民俗資料を対象として研究を行っていた。
妖怪と幽霊と神を区別し、妖怪は「零落した神」、つまり神仏や祖霊への信仰が衰退したものとして捉えていた。

 

日本人が信じるもの


日本人の宗教への向き合い方は「信じていなくても、宗教的な心は大切である(例:お盆の墓参りなど)」という固有の特徴を有している。科学で解明できない神秘は未だに人の心を惹きつけてやまず、日本人が漠然と心の拠り所にしている「何か」が妖怪を面白がる気持ちに重なっているとも捉えられるかもしれない。

 

感想

私は東方クラスタであるため、柳田國男の研究については多少なじみがあった(※東方妖々夢の2面ボス、橙の出没する「マヨヒガ」も柳田の研究と関連が深い)。

 

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井上円了に関しては名前こそ聞いたことがあったものの、「科学的見地から妖怪の正体を暴こう」というアプローチが世界から妖怪を消滅させる原因にもなったのではないかという反感? のような気持ちも多少あるため、そこまで深く興味を持って調べたことがなかった。

しかしこの本を読むうちに、「井上が妖怪研究を進めてるうちに、どうやら一部は本当に科学では説明がつかないらしい」という事に気づいてしまったあたり、ちょっと面白いなとも思った。

 

私自身、妖怪はまだ、この世にいると信じているので、ロマンを感じることができた。

 

 

 

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